大判例

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大阪地方裁判所 昭和40年(わ)5181号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人は、昭和四〇年八月一九日、それまで約七年間愛媛県新居浜市所在の東新学園に養護を委託してきた先妻との子○○○子(昭和二六年三月二六日生・当時一四歳)を同学園から引取り、肩書住居地で養育するようになつた。ところで、同女が同居するようになつてから、現在の妻石村重美が自身の体が弱かつたことと床を並べて寝る右○子に対する教育的な配慮とから、被告人の求める肉体的交渉を拒みがちとなり、このため、肉体的欲望の強い被告人は性的不満を増していくこととなつた。そして、○子と床を同じくし、そのため自己の体にしばしばふれる同女の年令に比して大柄な体に、漸次子としてより女として強く意識するようになつていつた。このような日々を送るうち、昭和四〇年一〇月一五日の朝、仕事に行くよう妻から起された被告人は、前夜夕食の支度ができていなかつたことで立腹したが、その憤まんが未だ残つていた等のことから仕事を休み、寝床でブドウ酒を飲み始めるうち、午前八時ごろには妻が仕事に出かけ、あとは中学に行こうとして支度をしている○子と二人きりとなつた。ところが、同女と二人きりとなつた被告人は酒の勢も手伝つて、日頃同女に対しいだいていた欲情がにわかにつのり、強いて同女を姦淫しようと決意するに至り、入口の扉に施錠したうえ、同女の強い抵抗を予知してこれを排除するため、炊事場から菜切庖丁(刃渡り約一五・五センチ)一丁(証一号)を持出して、これを振上げ、「裸になつて布とんの中に寝よ」とおどし、畏怖していわれるとおり布とんの中にはいりながらも、なお思いとどまるよう哀願する同女に対し、再び庖丁をもつて、「いうとおりにせんと殺すぞ」等とおどして、その反抗を抑圧し、居室において強いて同女を姦淫したものである。

(法令の適用)

被告人の判示行為は刑法一七七条前段に該当するのでその所定刑期範囲内において処断すべきものである。ところで、本件は、父親たる被告人が自己の欲望を満たすため、年端もゆかないわが子を犯す、しかも、兇器をもつておどして犯す、という、全く人間性の存在を疑わせるような行為をしたものであつて、人倫の道にもどること甚だしく、また醜い欲望の犠牲に供された被害者への影響は計り知れぬものがある。いまはただ、同女に対し、一刻も早くこのいむべき出来事を忘れ去り、ひたすら将来に向つて健全な歩みを進めることが期待され、幸い、証人三木明の証言によれば、同女が日々そのような態度をとつていることがうかがわれるのはなによりである。しかしながら、なお時に、このいまわしい出来事が同女の脳裡をかすめ、言い知れない苦悩を感じさせることのあることもまた否定しえないところであろう。このことを思うと被告人の被害者に及ぼした被害ないし影響はまことに重大なものがある。以上のような諸事情およびその他諸般の事情を考慮するとき、前記刑期範囲内において、被告人を懲役二年に処するのを相当と考える。次に、未決勾留日数の算入については刑法二一条を適用してそのうちの一三〇日を右刑に算入することとし、訴訟費用については刑訴法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。(本間末吉 和田功 岨野悌介)

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